[本文より] いやはや大変な時代になりそうである。いわゆる「IT革命」というキーワードに凝縮される,グローバル情報通信システムのとどまるところを知らない膨張現象のことだ。旧来の枠組みでは情報の管理・統制は国家権力の維持に絶対不可欠な装置であり,いわば最後の砦の一つとされていた。しかし,もはやそれも過去のものとなりつつある。今や,膨大な量の多種多様な情報が地球上を瞬時に駆け巡り,国境,人種,民族,政治体制,経済構造,言語,文化,価値観といったさまざまな壁をいとも簡単に越えて,雪崩を打つ勢いで人々に浸透しつつある。この前例のない異質な「革命」に伴い,昨今<digital divide>という恐ろしいコトバを耳にするようになった。世界は今後,ITを使いこなして多様な目的を達成できる「情報強者」とそうでない「情報弱者」の側にますます二極分化するというのだ。つまり,個人の活動・仕事,企業の成否は言うに及ばず,社会や国家の存亡さえ左右しかねないということらしい。しかも,両者の格差は今後ますます広がり続けていくという。
駿河台大学教授 上地安貞