[本文より]指導要領の改訂により「教科書」編集は今までと違った条件の中で行われることになった。教科書の作成に携わっている者としては,「言語の使用場面の例」や「言語の働きの例」が例示されたことはそれほど問題がないとしても,使用「語い」について1割前後削減されたことで,今までとは違う「きゅうくつ感」を味わっている。
今回の改訂で「実践的コミュニケーション能力の育成」が掲げられ,「聞くこと」「話すこと」を含め4領域の有機的な扱いが重視され,検定教科書全体が「使える英語」への傾斜を一層強めるものと思われる。そこで現場から出てくる要望のひとつとして,「自然な話し言葉の生きた」教材を求める声が一段と強くなるのではないかと思われる。この種の要望にも応え,かつ「基礎・基本的な内容の定着がはかれるような」教材作りをしたいところである。「生徒の実態に合った教えやすい教材」(teachable materials)と「実際の言語使用の特徴を生かした教材(authentic materials)とのバランスを計るべく奮闘中というのが現状である。
清泉女子大学教授 石田雅近