【本文より】 先に生物学史を念頭に置いて授業をしている,と書いたが,実践というほどのことをしているわけではない。
いま私が生物を教える勤務校は,進学校といわれる男子高校である。教科書の解説と問題演習に授業の多くを割く毎日である。だから,授業はどうしても”話”が多くなる。勢い,”話”は教科書に記されたことの周辺にまで及ぶ。このとき,生物学史,科学史の話題はたいへん役に立つ。というよりむしろ,教科書の,いつ,誰が,どんな研究をしたという記述の補足に研究の時代背景や発見のエピソード,生物学者の人となりなどは欠かせない。
生物学の歴史の深い知識があるわけではないし,授業では,そう余談に時間は割けない。授業の刺身のつまほどの話の内容である。
栃木県立栃木高等学校 川島基巳