【本文より】 環境問題の基本は,すべての人の自己の教育にある。指導的立場の専門家や政治家も勿論必要だが,大多数の人が目覚めなければどうしようもない。人類全体の教育には指導理念としての哲学が必要である。そうした哲学を,今道友信(中央公論 平成11年1月号)は生圏倫理(ECO-ETHICA)という言葉で表現した。今道は美と歴史に対する哲学のキーワードとして生圏倫理を提唱している。いまの日本では哲学がなかなか評価されにくい傾向があるが,生圏倫理という思想は人類が21世紀を生き抜くためには皆で育て上げていかなければならない倫理であると思われる。
東京大学名誉教授 海野和三郎