【本文より】高校の理科に,理科総合という新しい科目が開講されることになり,今その教科書の準備が進められている。従来の要素還元論的な学問分野の枠組みを問い直し,その統合とか総合化を進めるという類の話は,教科の話に限らずもうだいぶ前からの世の中の流れである。しかしそれが具体的に何を意味するかとなると相変わらず不明な点が多い。例えば文理融合の試みとかよく聞くが,何か具体的に成功したという話はあまり聞かない。その顕著な具体例のひとつが環境問題である。以下でそれを参考に,総合化の何が問題か,考えてみたい。
東京大学教授 松井孝典