[シリーズ:私の心に残った数学の本]「直観幾何学」
学習院大学理学部助教授 川崎徹郎
ニューサポート高校数学Vol.4
東京書籍2005年9月作成
[本文より]
名著である。難解であることも知られている。数学科の4年生のゼミテキストとするには,かなり勇気がいる。出版年も古く(原著は1932年),今から手に入れるのは難しそうである(編集部注:2005年8月15日にみすず書房から第9版が発行された)。それにも関わらず,ここで紹介したいと思うのには理由がある。たとえ読まなくても,見ているだけで読者をワクワクさせる魅力にあふれているからである。初めてこの本に触れたのは,学部4年生か,修士1年のときか定かでない。ただ,その場面はよく覚えている。ミルナーの特性類に関するノート(当時,まだ出版されていなかった)を自主ゼミで読んでいて,「射影平面が3次元空間にはめ込まれるって書いているけど,何だろう」「ボーイ曲面っていうらしいぜ」「あ,これは(参照は)ヒルベルト,コーン・フォッセンだ」といわれたのである。
学習院大学理学部助教授 川崎徹郎