【本文より】 教育実習生を指導するにあたり,これまではベテランの先生の授業を見学させて,それを参考にして自分なりの指導方法を模索させ,実習させ,そのなかで総合的にアドバイスをするという方法をとってきました。実習生の持ち味を最大限に生かした個性豊かな先生を育てようとするこの方法は,指導教諭が実習生の人間性を理解しそれを伸ばすだけの柔軟性,力量を必要としますが,体力,気力が充実した30代ではそれが可能でした。実際私たちもそのように育てられ,周囲の素晴らしい教師の教授法を手本にそのノウハウを実際の経験のなかで磨き,培ってきました。しかし40代になると生徒や実習生との年齢差も次第に大きくなり体力,能力も低下し,これまで一緒に零から作り上げるというオーダーメイド的指導方法は難しく感じるようになってきました。そこで基本になる部分はマニュアル化し,その後の指導のなかで実習生の持ち味を生かす指導をするというイージーオーダー的指導に切り替えようと考えました。これまでのノウハウを整理し今後に役立てたい願いもありました。先輩の先生方はこのようなノウハウは教わるものでなく,自分で学び取ることがプロの教師になる必要条件だと言うかもしれません。しかしながらまだよく解らない新人教師にとってはひとつの指標になり,役に立つであろうと思いこの作業に着手しました。もちろんその事で数学嫌いが少しでも減ること,数学が解る,好きだ,得意だと言う生徒が少しでも増えることが本稿の最大の願いです。
茨城県立水戸第一高等学校 豊崎利明