[本文より]
先生方はどんな気持ちで新しい年を迎えられたのだろう。「12月31日も1月1日も1日に変わりはないのだ」という「現代風」の感覚の方がしっくり来る世代なのだろうか。昔の人にとって,正月を迎えると言うことは今の生活からは想像できないほど大きな意味を持っていた。台風や大火災など,当時の人知を超える力に左右される現実を受け入れ乗り越えていく知恵として,新しい年の初めに去年の不運を消し去り,この1年の幸いを神に祈るセレモニーを大切にしてきた。不浄を嫌いめでたさにこだわり,正月を「ハレ」の場に仕立てる演出に努めるのである。高校現場の数学教育は真剣に思いをめぐらすと無力感に包まれ,暗い気持ちにならざるを得ない状況にある。しかし新年である。先人たちの知恵に倣って高校数学教育への期待を並べてみよう。もちろん期待で終わってしまっては意味がない。どれも体験,実践で裏打ちされた実現可能なものである。
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山梨大学教育学部教授 吉川行雄