[本文より]
近年,青少年による凶悪犯罪の多発やニートの増加などがマスコミを賑わし,社会問題化してきているが,これらの最大要因として,規範意識やモラルの低下,社会性の不足などがあげられよう。小中学校では,「道徳」の時間を中心とした学校の教育活動全体を通じて道徳教育が行われることとなっているのに対し,高等学校では単に学校の教育活動全体を通じて行われることとなっており,小中学校のように道徳教育の中核となるものが存在しない。だが,高校生の精神年齢の低年齢化や時代風潮などから,「人間としての在り方生き方」を教える道徳教育の必要性が高まってきている。「道徳」の存在しない高等学校で,その代替的役割を一番期待されているのが公民科の「倫理」である。現行の『学習指導要領』(1999年告示)では,「人間としての在り方生き方に関する教育,すなわち,高等学校における道徳教育の役割を一層よく果たすことができるよう」(『高等学校学習指導要領解説 公民編』文部省,1999,42頁)に改訂されて内容構成の工夫がなされている。
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山口県立小野田工業高等学校教諭 永添祥多