御法
詞書第二面(第三紙・第四紙)
五島美術館所蔵
平安時代後期 12世紀
大きさ:縦21.8cm横47.6cm
掲載期間:2001年1月~2003年12月
原文
吹き出でたる夕暮に,前栽見給ふとて,脇息によりゐ給へるを,院,わたりて,見たてまつり給ひて,「今日は,いとよく,起き居給ふめるは。このお前にては,こよなく,御心もはればれしげなめりかし」と,きこえ給ふ。かばかりの隙あるをも,「いと嬉し」と,思ひ聞こえ給へる御気色を,見給ふも,心苦しく,「つひに,いかにおぼし騒がん」と思ふに,あはれなれば, おくと見る程ぞはかなきともすれば風に乱るる萩の上露 げにぞ,折れかへり,とまるべうもあらぬ花の露も,よそへられたる,折さへ忍びがたきを, ややもせば消えを争ふ露の世におくれ先だつ程へずもがな とて,御涙を払ひあへ給はず。宮, 秋風にしばしとまらぬ露の世を誰か草葉のうへとのみ見ん
五島美術館所