御法
詞書第一面(第一紙・第二紙)
五島美術館所蔵
平安時代後期 12世紀
大きさ:縦21.8cm横46.6cm
掲載期間:2001年1月~2003年12月
原文:
中宮は,まゐり給ひなむとするを,「今しばしは,御覧ぜよ」とも,きこえまほしう思せども,さかしきやうにもあり,内裏の御使のひまなきにも,わづらはしければ,さも聞こえ給はぬに,あなたにも,え渡り給はねば,宮ぞ,わたり給ひける。「かたはらいたけれど,げに,みたてまつらぬも,かひなし」とて,こなたに,御しつらひを殊にせさせ給ふ。こよなう痩せほそり給へれど,「かくてこそ,あてになまめかしきことの限りなさも,まさりて,めでたかりけれ」と,来し方,あまり匂ひ多く,あざあざとおはせしさかりしは,中々,この世の花のかをりにも,よそへられ給ひしを,限りもなくらうたげに,をかしげなる御さまにて,いとかりそめに,世を思ひたまへる気色,似る物なく心苦しく,すずろに物悲し。風,すごく
五島美術館所