[巻頭言]手書き文字には魂がやどる
書家 杭迫柏樹
ニュー・サポート高校書道Vol.3
東京書籍2006年4月発行
[本文より]
二〇〇一年一〇月,同時多発テロ事件の一ケ月後,私はニューヨークの街角に立っていました。交差点のビルの,手の届くかぎりの壁にビラが貼られ,何とそれが,行くえ不明の父親やファミリーの消息を求める生々しい手書き文字であったことに言い知れぬ衝撃と感動を覚えました。魂の強烈な訴えに圧倒され,しばし,ここが活字文化全盛のアメリカであることを忘れさせるほどでした。
書家 杭迫柏樹