[巻頭言]「かな」について思うこと
榎倉香邨(書家)
高校書道ニューサポートVol.2
東京書籍2005年春発行
[本文より]
自国の文字をもたなかった日本人は,仏教と共に中国から伝来した漢字を見事に,独自の表音文字として「かな」をつくり上げました。それは漢字が渡来してから約四〇〇年後の平安時代中期でした。当時の王朝・貴族を中心とする人たちの叡智であった事は無論ですが,日本の自然風土に根づいた人たち,分けても繊細で温雅な女性の感性,中国にはない面意識からの間まの感覚,毛筆と料紙によるたて書きとその連綿によって,つくられたことは見逃すことはできません。
書家 榎倉香邨