アマミノクロウサギのこと
作家 立松和平
2006年4月発行
作成日:東京書籍2006年4月
[本文より]
アマミノクロウサギは奄美大島のシンボルであり,国の天然記念物だ。世界でも奄美大島と徳之島だけに生息する。ウサギ科の一属一種の世界的珍獣である。一般のウサギより小さくて,耳も短い。身体の色は黒に見えるものの褐色を帯びている。
奄美大島の高等学校の校長室で,昔父兄が持ってきたという剥製を私は見たことがある。また博物館でも見た。夜行性で用心深いため,奄美大島で暮らしていても見たことのない人が多い。名前だけが一人歩きするように響き渡っているのだ。
作家 立松和平