[本文より]日本でも最近パブ(pub)のスタイルに似た酒場が増えてきたようである。パブという名称もめずらしくなくなった。周知のようにパブは「パブリック・ハウス(public house)」の簡略形である。酒場に「パブリック」とは奇異な感じがしないでもないが,たくさんの人が出入りするという意味でなら,納得できないこともない。ただ「パブ」に「居酒屋」という訳語をあてはめている辞書もあるが,ちょっとそぐわない。パブは酒場であると同時に,社交場というニュアンスが強い。
パブの本場はご存知のようにイギリスだが,かつてのイギリス植民地であったニュージーランドでもパブの伝統は生きている。しかし,聞いてみると,パブのかわりに「バー(bar)」という若い人が増えているそうだ。アメリカニズムの影響だろうか。あるいは,ニュージーランドの若い人たちに蔓延しているイギリス離れの現象のためでもあろうか。くわしいことはよくわからない。
山形大学名誉教授 金山等