[本文より]ニューヨークで生活していると,英語で電話がかかってきます。(あたりまえです)
「りーん,りーん。」と電話がなります。
「ハロー?」と受話器を取る私。
その受話器を取った瞬間,話しかけてくる相手が英語なのか,日本語なのか,私にはわかるのです。
受話器の向こうで,かすかに「クチャッ」という唾液の音と,息を吸う音が聞こえてくると,
「Hello?」
何も聞こえないと,
「もしもし?」
ニューヨークに住み始めた頃,この二つの違いは私にとって大きな違いでした。この二つを聞き分けて,心の準備をするのです。
日本人がなぜこんなに英語の発音が下手なのかということを,私なりに考えてみました。じつは日本語という特殊な言語が理由の一つになっているのではないか...。汚い話しですが,英語をしゃべろうとすると唾液を駆使しないといけないのです。口の中で舌を縦横無尽に動かすということは,唾液という潤滑油が絶対的に必要となってくるのです。
イラストレーター 海沼築紫