主役の渥美清氏が1996年に亡くなり,映画「男はつらいよ」のシリーズが打ち切られた。それからしばらく経過していることもあり,題名は知っているが,テレビを通じてさえ作品を見たことがないという学生がほとんどである。実は,筆者も職員旅行のバスの車内を含めて,これまでほんの数本を見た程度である。確かにマンネリという指摘もあるが,シリーズになるだけの内容は十分にあると思う。名人による名作落語と同じで,何度見ても格別の味がある。ところが,この映画の英語吹き替え版を太平洋上の国際線で見た時はいささかショックであった。古きよき日本人代表とも言える「寅さん」が,努力もせずに?英語を流暢に話すことに我が耳を疑った。違和感を覚えつつも,知らず知らずのうちにストーリーに引き込まれていった。原文との比較はできなかったが,間違いなく名訳であったような気がする。
愛知教育大学 杉浦正好