学習指導要領は,これまでほぼ 10 年ごとの改訂を繰り返してきましたが,平成 10〜11 年改訂以来の 3 回の改訂では,「生きる力」という抽象度の高い理念を学習指導の目標としてどう具体化するかが課題であったように思われます。すなわち,平成 10〜11 年改訂では,自ら学び自ら考える力などの「生きる力」の育成が理念として提示され,続く平成 20 年の改訂では,「生きる力」をバランスよく育む観点から,育成すべき学力を①基礎的な知識及び技能,②思考力,判断力,表現力等,③主体的に学習に取り組む態度という 3 要素で示しました。そして今回の平成 29 年改訂では,各教科の目標及び内容を下図に示す 3 つに再整理しました。そのうえで,学習を通じて「何ができるようになるか」を意識した指導を行うことを求めています。つまり,抽象的な概念である「生きる力」の中身を到達目標という形で具体的に示すことで,学習指導の改善を実現しようとしているように思われます。
元文部科学省初等中等教育局主任教科書調査官・視学官 小串 雅則