[特集 これからの英語教育]
基礎練習からコミュニケーション活動へ~表現活動を高めるために~
下村勇三郎(日本橋学館大学講師)
英語-教室の窓Vol.3 東京書籍2005年1月発行
[本文より]
東京駅前の丸の内OAZO地区にオープンした「新丸の内センタービル」に行ったときのことである。そのビル内のイタリアンレストランで昼食をとっていると,ちょうど斜め向かいに,やっと歩けるようになったばかりの男の子を連れて食事に来ていた若夫婦がいた。その男の子も一緒に食事をするのだが,母親にスパゲッティを少し口に入れてもらって食べている。両親はフォークの持ち方,使い方を教えているがうまくできない。そのうち諦めて,男の子は手でスパゲッティをつまんで口の中へ入れた。やがてはフォークの柄の方を口に入れ始めた。親は注意しながら正しい持ち方を教えるのだが,なかなかうまくいかない。私は「当然だろうな」と思いながらじっと眺めていた。フォークの使い方,箸の持ち方を覚えるのにどのくらいかかるのだろうか。大人は幼児の頃の自分をすっかり忘れてしまっている。少しずつ覚えて,何日もかかるのであろう。
日本橋学館大学講師 下村勇三郎