ニューサポート高校「国語」vol.34(2020年秋号)より。「のんびり行こうよおれたちは」。これは、一九七〇年ごろに流行ったフォークソングの歌詞です。古き良き昭和、という言葉が続きそうな感じですが、当時は、そんなに平和でのんびりした時代だったんでしょうか?いや、当時の世の中では、いわゆる公害問題やオイルショックに翻弄され、殺人事件や交通事故の死亡者は現在より数倍多いのです。今の若者が見たら、相当ブラックな世界に見えるのではないでしょうか?一方で、植木等の無責任な歌が流行った時代でもありますが、世の中のお父さんたちは極めて真面目に働いて、高度成長時代を支えてきたのです。こういう矛盾したものが混在し、ものすごいスピードで変化していった時代、 それが昭和という時代だった気がします。
京都大学大学院教授 酒井敏