- 世界遺産「富岡製糸場」と「荒船風穴」
- 一般応募 大島 和紀
- 撮影年月日 2014年10月26日
- 撮影場所 群馬県 富岡市,下仁田町
応募者解説
世界の絹産業を発展させた象徴的な施設として,今年世界遺産に登録された「富岡製糸場」。
殖産興業を担う官営工場として設立されたこの製糸場は,フランスから導入した技術を改良して
良質な繭を生産し,日本の養蚕・製糸業を世界トップレベルに引き上げた。
さらに,良質な生糸を広く安く供給するため,下仁田町に作った自然の冷気を利用した
蚕種(蚕の卵)の貯蔵施設「荒船風穴」が大きく貢献した。「荒船風穴」は,冬季に
玄武岩層の地下にできた氷を吹き抜ける風が吹き出す地形で,1℃から3℃位の冷気が
春・夏・秋を通じて常時得られる天然の冷蔵庫。この冷気により,蚕の孵化をコントロールし,
それまでは,春に1回だった養蚕を夏や秋にも可能として生糸の増産につなげた。
増産が可能となると良質な生糸を広く世界に輸出し,高級繊維の絹をより身近な存在に変えた。
1920年代には世界一の生糸輸出国にもなり,まさに日本が近代工業化世界に仲間入りする鍵となった
歴史的・経済的価値のある遺産である。
撮影上の工夫として,荒船風穴の大きさがわかるように,あえて人を入れて撮影しています。
《撮影機材》
カメラ:Cannon EOS 5DII
レンズ:EF24-105 F4L
講評
「荒船風穴の大きさが分かるように,あえて人を入れて撮影する」という撮影者の意図が十分に伝わる写真である。
周りに広がる林と,ぽっかりと開いた黒い穴が対照的で,正に「天然の冷蔵庫」という言い方がぴったりであることがよくわかる。日本の絹産業の工夫が凝縮された一枚である。
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